No.12 代理5

【本日のテーマ】代理5~無権代理人の責任、表見代理

本日の講義の「図解」は以下からダウンロードして下さい。↓
http://www.law-ed07.com/kougi/0012.pdf

前回は、無権代理で本人の追認権・追認拒絶権、相手方の催告権・取消権につ
いて説明しました。

この無権代理の場合に、誰がどのような権利があるかについては非常に重要で
すので、本人の権利、相手方の権利は混乱しないようにしておいて下さい。

それでは、本人、相手方と話をしてきましたが、無権代理人には何らかの権利
はないのでしょうか?

これはありません。

無権代理人というのは、頼まれもしないのに、勝手に代理行為を行った者です。
この無権代理人には、特に自分から何かできるという権利というものはありま
せん。

これもたまに試験にでます。

たとえば、無権代理人は、催告とか、取消ができるなどという問題が出れば、
「誤り」です。

ダウンロードしてもらった図表1の通りです。

ただ、無権代理人には「責任」はあります。

これは当然でしょうね。

どういう責任があるかというと、本人は追認拒絶をすれば、それで難を免れま
すが、困るのは相手方です。

そこで、無権代理人は「本人の追認を得ることができなかったときは、相手方
の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。」と民法に規
定されています。

ここのポイントは、まず「履行」又は「損害賠償」の責任を負うという点です。

つまり、本人に代わって「履行」するか、「損害賠償」でお金で解決するか、
ですね。

この「又は」というのも、覚えておいて下さい。

履行「及び」損害賠償の責任を負うと、出題されたら「誤り」です。

「又は」と「及び」の違いというのは、非常に重要で頻繁に出てくる言葉なの
で、その違いは必ず覚えて下さい。

「又は」というのは、どちらか「1つ」という意味です。

「A又はB」というと、AとBのどちらか1つということです。

「及び」というのは、「両方」という意味です。

「A及びB」というのは、AもBも両方という意味です。

もう一つ、無権代理人の責任のポイントは、履行か損害賠償かの選択権は、相
手方にあるということです。無権代理人にその選択権はありません。この点の
出題の頻度は少し落ちますが、確認しておいた方がいいです。

無権代理人の責任に関して、さらに「無権代理であることを相手方が知ってい
たとき、若しくは過失によって知らなかったとき」は、相手方は無権代理人に
無権代理人の責任を追及することはできないという点も覚えて下さい。

これはよく出題されます。

要するに、相手方は善意無過失でないと、無権代理人の責任を追及できないと
いうことです。

前に、相手方には催告権と取消権があるが、催告権は弱い権利なので、相手方
は悪意でも催告権があり、取消権はある程度強い権利なので、相手方は過失が
あってもよいが善意でなければならないという話をしました。

無権代理人の責任の追及は、本人に代わって「履行」まで求めることができる
大変強い権利です。

こんなに強い権利を行使するには、相手方はそれなりに強く保護されてしかる
べき状態にないといけないということで、善意無過失が要求されているわけで
す。

この相手方の善意か悪意かいう話は今日の一番最後に覚え方も含めて、図表を
見ながらまとめます。

前半の最後ですが、ちょっとこれは試験の出題頻度は落ちますが、「無権代理
人が行為能力を有しなかったときは、無権代理人の責任を追及できない」とい
うのも覚えておいて下さい。

行為能力を有しないということは制限能力者であったということです。

制限能力者に対して無権代理人の責任を追及するのは、制限能力者に対して酷
だというということです。

さて後半は、「表見代理」というのを説明しましょう。

今までは、無権代理というのは、追認された場合は別として、本人に効果が帰
属しないということを前提に話をしていました。

これは無権代理である以上、当然と思われますが、実は無権代理であるにもか
かわらず本人に効果が帰属する場合があります。もちろん、本人が追認してい
ない場合でも、ということですよ。

本人が追認していないのに、本人に効果が帰属する場合というのは、どういう
場合か?

これは、本人が「悪い」場合です。難しい言葉で言うと、本人に「帰責性」が
ある場合です。「帰責性」というのは、本人の「責」任に「帰」することがで
きるという意味です。

たとえば、本人Aが不動産の売却について、Bに代理権を与えた旨の新聞広告
を出したとします。

しかし、何らかの事情で、実はBに代理権は与えていなかったとしましょう。

Bに代理権を与えていない以上、これは無権代理ですよ。

しかし、新聞広告を見た人は、Bに代理権があると信じるのもやむを得ないこ
とです。

このように本人に責任があって、相手方がそれを過失なく信用してしまった場
合、これはどう考えても、本人ではなく、相手方を保護すべきでしょう。

こういう場合を「表見代理」といい、無権代理であるにもかかわらず、本人に
効果が帰属します。

この「表見」代理という言葉、いかにも法律用語で難しい。

表見代理というのは、先ほどの新聞広告の例からも分かりますように、外(外
部の人間)から見て、代理権があるように見える場合です。

「表」(オモテ、外)から「見」ると代理権があるように見える場合なので、
「表見」代理というのです。

この表見代理が成立するには、3つの要件が必要です。

1.代理人に代理権があるような外観が存在すること
2.それについて本人に責任があること
3.相手方が善意無過失であること

この3つです。

この3つの要件は、試験的には覚える必要はありません。
話を整理して理解しやすくするためです。

1.の外観の存在は、先ほどの例で言うと、新聞広告がその外観ですよね。

2.は、先ほどの例で言うと、本人が新聞広告を出しています。

3.は先ほども触れましたように、相手方の善意無過失ですが、これも相手方の
催告権・取消権・無権代理人の責任の追及の話から分かりますように、表見代
理というのは、代理権があったのと同じで、本人に効果が帰属します。これは、
相手方にとっては当初の目的を達することができるので、最も強い権利です。

そのような強い権利を主張するには、それなりの状況、つまり相手方の善意無
過失が必要なわけです。

そこで、民法はこのように本人に責任が認められるような場合として、3つを
挙げています。

つまり、表見代理が成立するのは、民法が規定している3つの場合ということ
になります。

その3つとは、以下のものです。
1. 代理権授与の表示による表見代理
2. 権限外の行為の表見代理
3. 代理権消滅後の表見代理

要するに、民法は、この3つのパターンのときは、本人が悪い。相手方が善意
無過失なら、契約の効果を本人に帰属させようと決めているわけです。

この3つのパターンは覚えて下さい。

この一つ一つを今から説明していきましょう。

1. 代理権授与の表示による表見代理

これは、先ほどの新聞広告の事例が分かりやすい。つまり、新聞広告で、Bに
「代理権を授与しましたよ」と表示しているわけです。

2. 権限外の行為の表見代理

これは、非常によく出題されます。

具体例としては、Aは、Bに、A所有不動産を人に賃貸することの代理権を与
えたが、Bは賃貸の範囲を超えて、Cに売却してしまったという場合です。

別の例で、よく試験に出題されるものとしては、Aは、Bに、A所有不動産に
抵当権を設定することの代理権を与えたが、Bは抵当権の設定の範囲を超えて、
Cに売却してしまったというような場合です。

今の例を理解するには、このBの代理行為は無権代理だというのをまず確認し
て下さい。

Bは賃貸とか、抵当権設定の代理権は授与されているけれども、売却の代理権
はありません。つまり、賃貸とか抵当権設定の範囲を飛び越えて、売却してい
るので、売却については無権代理です。

でも、賃貸とか抵当権設定の範囲では、ちゃんとした代理人ですよね。このよ
うにもともと持っている代理権を基本代理権といいます。

相手方としては、本当の代理人を相手にしているので信用してしまいが、その
代理行為として行った行為は、本人から与えられている代理権の範囲を超えて
いるわけです。

場合によっては、売却の代理権があるかのように信じるのもやむを得ないこと
もあり得ます。

こういう場合は、相手方の善意無過失を前提に本人に効果を帰属させようとい
うことです。

3. 代理権消滅後の表見代理

この代理権消滅後の表見代理については、非常に分かりやすい事例があります。

最近は、銀行引き落としで、家に集金に行くものというのが減ってきてて、ち
ょっと困りますが、新聞代でも何でも、毎月集金に来ますよね。

普通、毎月同じ従業員が集金に来ています。今月もいつもの人が集金に来たの
で、お金を支払ったとします。

しかし、その集金に来た従業員は、すでに1週間前にクビになっていて、現在
は集金するという代理権を失っています。

この集金する行為は、無権代理です。

しかし、普通毎月集金に来ていた人に支払ってしまいますよね。善意無過失で
す。

こういう場合に支払った行為は、有効としようというのが、代理権消滅後の表
見代理です。

これで、意味は分かってもらえたと思いますが、宅建でこの集金の事例が出題
されるということはないでしょう。

あくまで理解用です。

宅建試験的に、出そうなのはどういう事例か。

「Aは、Bに不動産売却の代理権を与えたが、その後Aは破産しました。にも
かかわらず、BはAの代理人として不動産をCに売却しました。Cは善意無過
失であっても、Aに不動産の引渡を請求することはできない。」という問題が
あったとしましょう。

これは「×」。

まず、本件は不動産の売却の代理権なので、任意代理です。任意代理では、本
人の破産は、代理権の消滅事由です。

したがって、Bは代理権を喪失します。これは代理権の消滅事由の問題です。
これ自体しっかり覚えておく必要があります。

それならば、Bは無権代理で、本人に効果は帰属しないとなりそうですが、も
ともとBは代理権を持っていたが、代理権が消滅した事例なので、「代理権消
滅後の表見代理」というのがあったというのを思い浮かべないといけません。

ならば、Cは善意無過失なら、本人に効果が帰属する。したがって、Aは売主
となり、Cに不動産を引き渡さないといけない、となります。

以上で、表見代理というのを理解していただけましたでしょうか。

最後に、もう一つ問題を出しますので、これで表見代理の理解を深めて下さい。
この問題は、最初はよく間違えるというのか、混乱してしまう可能性がある問
題です。

Aは、父Bの実印を勝手に持ち出し、委任状を偽造し、B所有の不動産をCに
売却した。Cは善意無過失であれば、Bに対して履行を請求することができる。

考えて下さい。

この場合、まず問題を解き始めた人が最初に陥る単純ミスがあります。

前に最初に簡単でいいから、図を書いて下さい、と言ったと思います。

通常、A:本人、B:代理人、C:相手方という事例が多いので、本問でもB
に対して「履行」を請求することができる、とあると無権代理人の責任と読み
間違えるケアレスミスをするという人も、たまにいます。

本問では、Bは「本人」です。

宅建の問題では、最初に登場人物にA、B、Cなどを割り振り、事例を説明し、
その後はA、B、Cの記号などでしか書いてくれませんので、誰が誰に何を請
求しようとしているのか気を付けて下さいこの問題は、単純だからいいですが、
登場人物の多い複雑な問題もあります。

次に、この問題で表見代理が成立すると考えた人は、その時点で間違いです。

表見代理とは、どういうものだったか。

本人に責任があるような3つのパターンのときに、相手方の善意無過失を前提
に契約の効果が本人に帰属するものです。

本問では、本人Bに悪いところ、つまり責任はありません。

息子のAが、父Bの実印を勝手に持ち出して委任状を偽造しているわけですか
ら、Bには帰責性がありません。

そして、先ほど説明した表見代理の3つのパターンのどれにもあてはまりませ
ん。

これは純然たる無権代理であり、表見代理は成立しません。

ということは、相手方が善意無過失であるからといって、本人が責任を負わな
いといけない理由はないので、CはBに履行の請求をすることはできないので、
本問は「誤り」ということになります。

Cは、実印を押した委任状を見せられているので、「信じるかな?」というふ
うに考えないように。

ちなみに、無権代理は、単純な問題でも、いつくも問題を作成することができ
ます。

問題ついでに、以下の問題の○×を答えて下さい。A:無権代理人、B:本人、
C:相手方です。

解答は、【編集後記】の後に載せておきます。

1.悪意のCは、Bに対して追認するかどうかの催告をすることはできない

2.AはBに対して、追認するかどうか催告することができる。

3.善意無過失のCは、Aに対して損害賠償を請求することができる。

4.Aに対して追認の意思表示をしたBは、その後この事実を知らずに取消権を
行使した悪意のCに対して追認の事実を主張することができる。

【編集後記】

今日は、非常に長くなってしまいましたが、次回に繰り越すのは中途半端なの
で、あしからず。

それと、本文は勢いで、問題で終わってしまいましたが、前半の最後で書いた
相手方の保護手段と善意・悪意などとの関係ですが、ダウンロードしてもらっ
た図表2をご覧下さい。

表の左端の1催告権→4表見代理にかけて、下に行くほど、相手方の保護が強く
なっています。

それに応じて相手方が保護される要件も厳しくなり、悪意→善意→善意無過失
となっていますので、覚えやすいと思います。

最後に、本文の問題の解答です。

【解答】

1. × 催告権は、善意・悪意を問わず認められます。

2. × Aは無権代理人で、無権代理人に催告権はない。

3. ○ 善意無過失の相手方は、無権代理人に対して履行又は損害賠償の請求
をすることができる。

4. ○ 追認権と取消権の優劣だけを考えると、取消権の行使時にはCはBか
らAへの追認の事実を知らないわけだから、Cの取消権が優先しそうだが、そ
もそも「悪意」のCには取消権はなく、Bの追認が認められる。