【本日のテーマ】代理4~無権代理
本日の講義の「図解」は以下からダウンロードして下さい。↓
http://www.law-ed07.com/kougi/0011.pdf
今日は代理の4回目で、「無権代理」というのをやります。
はっきり言って、「無権代理」はヤマです。
代理の問題の多くは、この「無権代理」からの出題です。
代理の最初で、代理人の行為の効果が本人に帰属するためには、
1.代理人が有効に契約等をしたこと
2.代理人が顕名をしたこと
3.代理人に代理権があること
の3つの要件が必要だと説明したと思います。
1.は当然です。
2.は顕名のない場合として説明済み。
次は、代理人に「代理権」がなかった場合が問題になりますが、これが「無権
代理」です。
代理「権」が「無」いので、「無権代理」というわけです。
それでは、この代理権がない場合は、どうなるのか?
この質問に単純に答えるのは、簡単ですよ。
代理人の代理権というのは、代理人の行為の効果が本人に帰属するための要件
ですから、代理権がなければ、代理人の行為の効果は本人に帰属しない。
これが大原則です。
それでは、なぜ代理権がなければ、代理人の行為の効果は本人に帰属しないの
か?
この質問に対する答えも簡単です。
代理権がないのに、代理人(この場合、代理人に代理権がないので、「無権代
理人」といいます。以後、このように表記します。)が代理行為を行うという
ことは、無権代理人が本人から頼まれもしないのに、勝手に代理行為を行った
ということです。
このような代理行為を認めていたのでは、本人の利益を害します。
つまり、本人の利益保護という観点から、無権代理行為の効果は本人に帰属し
ないわけです。
裏を返して言えば、無権代理行為が行われたが、本人がそれを後からそれを認
めることはかまわないということになります。
これを無権代理行為の「追認」といいます。
たとえば、Aが友人のBに対して、「転勤が決まったので、今の自宅を売りた
い。」という話をしたとします。このときは、AはBに代理権は与えていなか
ったとします。
その話を聞いて、BがAの自宅を買いたいという人を見つけて契約したとしま
す。
その話を後でAが聞いて、条件も値段もいいので、この契約で売りたいと思っ
たとしますよね。
このときに、この契約の効果は絶対にAに帰属しないとする必要もないわけで
す。
A本人が、望んでいるわけですから。
このように、無権代理行為というのは、原則として本人に効果が帰属しないが、
本人は追認することができます。
これを本人の「追認権」という表現もします。
他方、やっぱりBが勝手に決めた契約はイヤだとします。
そのときは、本人は「追認拒絶権」を行使することもできます。
本人が追認拒絶権を行使しますと、契約の効果は本人に帰属しません。
ちょっと、話がややこしくなってきましたので、ここまでをまとめると、
・無権代理行為は、原則として本人に効果が帰属しないので、本人が放ってお
ければ、本人に効果が帰属しない。
・本人が追認すると、本人に効果が帰属する。
・本人が追認拒絶権を行使すると、本人に効果が帰属しない、
ということになります。
ちなみに、本人が放っておいても、効果が本人に帰属しないのなら、追認拒絶
権というのは意味がないと思われるかもしれません。
この追認拒絶権は、本人が追認しない、つまり本人に効果が帰属しないという
ことを明確にするという意味があります。
本人が、追認しないで放っておくと、基本的には本人に効果が帰属しないが、
いつ追認がなされて、本人に効果が帰属するというふうに、契約の効果がひっ
くり返るかもしれないという、不安定な状況になります。
追認拒絶権は、それに終止符を打って、効果不帰属を明確にするという意味が
あるわけです。
ところで、この追認又は追認拒絶は、誰に対して行うのか。
普通に考えれば、相手方に対して、追認したり追認拒絶したりしそうに思いま
すが、これは無権代理人に対して行っても、相手方に対して行っても、どちら
でもかまいません。
ただ、無権代理人に対して追認したり追認拒絶したりした場合には、相手方は
追認や追認拒絶の事実を知ることができない可能性がありますよね。
そこで、民法は、追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手
方に対抗することができない、と定めています。
「対抗できない」というのは、「主張できない」というのと同じ意味です。
ただし、相手方が追認とか追認拒絶の事実を知ったときは、これを主張できま
す。
相手方が知っている以上当たり前ですよね。
では、追認の事実を相手方に主張するというのは、具体的にどういう意味合い
があるのかですが、これは現段階で説明しても理解できませんので、後半部分
の最後の方で、その意味を説明します。
▼ココから後半↓▼
さて、前半では、無権代理行為は原則として本人に効果が帰属しないが、追認
がなされると、本人に効果が帰属するという話をしました。
これは、本人の利益を考えてのことです。
本人は、それでいいかもしれませんが、実は無権代理と契約した「相手方」の
保護というのも考えないといけません。
この「相手方」の保護というのは、分かりますか?
相手方は、どういう状況にあるかを考えて下さい。
前半に説明しましたように、無権代理行為がなされますと、本人が追認すれば、
本人に効果が帰属するが、追認拒絶すれば本人に効果は帰属しません。
これは本人の腹一つで決まるので、相手方としては、いったい本人に効果が帰
属するのか、帰属しないのか非常に不安定な状況になります。
このような相手方の状況も考えて、民法は相手方に催告権と取消権を与えまし
た。
つまり、相手方は本人に対して、「追認するかどうかいったいどちらなんだ」
と返事を促す権利である催告権と、
こんなに状況がはっきりしないのなら、この契約からは抜けさせてもらいます
という取消権を与えたのです。
次に、この催告権と取消権の内容をもう少し詳しく見ていきますと、
催告権とは、今説明しましたように「相手方が、本人に対して、相当の期間を
定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることが
できる」権利です。
この催告権というのは、たしかに相手方の保護にはなりますが、これはきわめ
て不十分です。
というのは、相手方にこのような催告の権利を認めても、本人がこの催告に対
して梨のつぶてで返事をしてこない可能性があります。
本人が催告に対して、返事をしてこなければ、追認されるかどうかという不安
定な状況が継続することになります。
少なくとも、催告「権」ということで、「権利」として認めているのなら、そ
れなりの「効果」がないと意味がありません。
このように相手方の催告に対して、本人から返事がない(民法の言葉で言うと、
「確答をしない」)場合は、「追認を拒絶したものともみな」します。
これは試験に何度も何度も出題されているので、絶対に覚えておいて下さい。
覚え方としては、無権代理行為は原則として、本人に効果が帰属しないので、
催告に対して確答しないということは、原則通り「追認する気はない」のだな、
ということです。
さらに、催告権に関して、もう一つ非常によく試験に出題される点も覚えてお
いて下さい。
相手方がこの催告権を行使するには、相手方の善意・悪意を問わないというこ
とです。
悪意の相手方にも催告権があります。
この場合の「悪意」とは、もちろん無権代理行為であることを知っていたとい
う意味です。
たとえ、悪意の相手方であっても、催告権は本人に対して、追認するかどうか
を聞くだけの権利です。
これくらいは、悪意の相手方にも認めようという趣旨です。
つづいては、取消権です。
この取消権は、相手方から無権代理行為を取り消すことです。
この相手方の取消権については、その行使について覚えておかないといけない
制限がついています。
それは、取消権は「本人が追認をしない間」に行使しなければならないという
ことです。
本人が追認してしまえば、その無権代理行為は有効になってしまうので、取消
権は、それまでに行使しなさい、ということになります。
ただ、本人が何ら意思表示をしない間に、相手方が取消権を行使すれば、契約
は取り消されるわけですから、契約の効果は生じず、本人も追認できなくなり
ます。
これは、言葉を変えると、本人の追認権と、相手方の取消権は、「早い者勝
ち」ということになります。
ところで、前半の最後で、「本人の追認または追認拒絶を無権代理人に対して
したときは、相手方がその事実を知るまでは、追認等の事実を相手方に主張で
きない」という話をしました。
これは、今説明した本人の追認権と相手方の取消権は早い者勝ち、という話を
読んだ後では、この規定の意味は分かると思います。
本人は、先に追認したとしても、その追認が無権代理人に対するもので、相手
方が追認の事実を知らない間に取消権を行使すれば、相手方の取り消しの方が
優先することになるわけです。
それでは今日の最後になりますが、取消権は相手方が善意でなければ行使でき
ません。
これも試験には非常に重要です。
絶対に覚える。
催告権は、相手方は善意・悪意を問わず行使できますが、取消権は、相手方が
善意でないと行使できません。この善意は、過失の有無を問いません。善意で
過失がある相手方でも取消権を行使できます。
催告権は、ただ本人に追認するかどうかを尋ねるだけの権利で、権利としては、
そんなに強いものではありません。
これに対して、取消権は相手方の方から契約の効力を否定していくわけですか
ら、それなりの強い権利であるといえます。
その強い権利を行使しようとするからには、相手方はそれなりに保護されてし
かるべき状態、つまり善意が必要とされているわけです。